βラクタマーゼに耐性の強い狭域セフェム

(第2世代セフェム系薬)

セファマイシン系:セフメタゾール(cefmetazole CMZ)
オキサセフェム系:フロモキセフ(flomoxef FMOX)

臨床におけるキーポイント

  • セファロスポリンと比べてβラクタマーゼに対する抵抗性が高い。
  • セファゾリンと比べて、グラム陽性球菌(ブドウ球菌、連鎖球菌)に対する抗菌力は若干劣るが、しばしば市中感染を引き起こす腸内陰性桿菌(大腸菌、クレブシエラ、プロテウス)と嫌気性菌(バクテロイデス)に対して安定した抗菌作用を有する。
  • 腹腔内感染症や骨盤腔感染症に対する有用性の高い薬剤となっている。
  • フロモキセフのほうがセフメタゾールよりもグラム陽性菌・陰性菌・嫌気性菌に安定した抗菌力を持つようである。

薬物動態

  • 体内によく分布・移行するが、血液脳関門は通過できない。
  • 腎排泄。

抗菌スペクトラム

  • グラム陽性菌では、ブドウ球菌・連鎖球菌(耐性肺炎球菌の治療は無理)をカバーする。(セフメタゾールのほうがやや弱い)
  • グラム陰性菌では大腸菌、クレブシエラ、プロテウスに有効。
  • 嫌気性菌(バクテロイデス)に有効

臨床応用

  • 市中腹腔内感染症の主要起炎菌は腸内のグラム陰性桿菌(大腸菌、クレブシエラ)と腸内嫌気性菌(バクテロイデスなど)。
  • これらを効率よくカバーするため、腹腔内感染症や骨盤内感染症、グラム陰性桿菌+嫌気性菌の合併感染に有用である。
  • それに加えてブドウ球菌にも有効であり、下部消化管や婦人科領域の術前予防投与にも用いられる。

用法

  • 1g 8時間おき

副作用

  • ジスルフィラム様作用がある。
  • 凝固能の低下に対しては週に1回10mgのビタミンKを投与する。
  • 血小板機能も障害する。

MEMO

  • 臨床上の立場は、まずは素直なグラム陰性桿菌(大腸菌・クレブシエラ)+嫌気性菌、用の薬剤、だろう。
  • 腸内嫌気性菌に有効、というのがこれらの薬剤の大きな特徴である。
  • 嫌気性菌に有効なセフェム:セフメタゾール、フロモキセフ、SBT/CPZ
  • 第一世代セフェム系のスペクトラムを覚えているならば、そこに嫌気性菌のスペクトラムが加わったと覚えても大体よい。(正確にはちょっと違うが・・)
  • セフェム系の苦手な菌:腸球菌、リステリア、嫌気性菌

(オキサセフェムとセファマイシンの異同について)

  • セフメタゾールとフロモキセフのスペクトラムは重なる
  • 抗菌力の点ではフロモキセフが勝るようである。
  • 臨床上、その「使いわけ」は特にないと思われる。
  • オキサセフェム系のラモタキセフ(LMOX)は第三世代に分類され、より広域のグラム陰性桿菌(エンテロバクターを含む)+嫌気性菌をカバーする。ラモタキセフはグラム陽性球菌には効かない。