1.セフェム系を上手に使い分ける


腸内細菌・ブドウ糖非発酵菌の分類 : 大きく3種類にわけて考える

◯尿路・腹部の市中感染症を起こす、一般に感受性のよい腸内細菌

                   (大腸菌、クレブシエラ)

◯時に院内感染や複雑性感染で見る、多少自然耐性傾向のある腸内細菌

          (エンテロバクター、シトロバクター、セラチア)

◯日和見感染や院内感染を起こす、耐性傾向が強い非発酵菌

                                   (緑膿菌、アシネトバクター)


臨床的に有用なセフェム系の分類

○狭域セフェム系薬:セファゾリン

◯βラクタマーゼに強い狭域セフェム系薬:セフメタゾール、フロモキセフ

◯広域セフェム系薬:セフトリアキソン

◯緑膿菌を含むグラム陰性菌用のセフェム系薬:セフタジジム

◯抗緑膿菌作用をもつ広域セフェム系薬:セフェピム


セフェム系の世代呼称との対比

○狭域セフェム系薬:セファゾリン               第1世代

◯βラクタマーゼに強い狭域セフェム系薬:セフメタゾール  第2世代

◯広域セフェム系薬:セフトリアキソン 第3世代(抗緑膿菌作用なし)

◯緑膿菌を含む陰性菌用のセフェム系薬:セフタジジム 

                   第3世代(抗緑膿菌作用あり)

◯抗緑膿菌作用をもつ広域セフェム系薬:セフェピム       第4世代


セフェム系の使い分けのコツは、腸内細菌・非発酵菌の理解である。

◯グラム陽性球菌に対するスペクトラムは変わらない。

◯ただし3世代はグラム陽性菌に弱い

(例外:セフトリアキソンは連鎖球菌・肺炎球菌に強い。)


おおまかに使いわけを考える。

◯セファゾリン:大腸菌、クレブシエラ用の治療薬。

◯セフメタゾール:同上だが、ESBL産生菌にも効く。

◯セフトリアキソン:そのほかの腸内細菌までカバーが広がった。

◯セフタジジム:緑膿菌までカバーが広がった(が、陽性菌には無効)

◯セフェピム:陰性菌は緑膿菌まで効くが、陽性菌にも効く。


おまけ 

◯腸球菌・リステリアはペニシリン効くのに、セフェム系は無効。

◯ESBL産生菌は殆どのセフェム系無効。



2.フルオロキノロンとアミノグリコシド


フルオロキノロンとアミノグリコシドは、いずれもグラム陰性菌を幅広くカバーする。


薬物動態/薬力学の観点からアミノグリコシドは注意が必要

 (組織移行が不良、膿瘍には無効)

抗菌薬適正使用の観点から、腸内細菌に対する治療はセフェム系を優先して使う。(まずは、抗緑膿菌作用のない薬剤からチョイス)


いずれもグラム陰性菌に幅広く良好な抗菌力を示すため、グラム陰性菌治療の際には選択肢として念頭におく。

ただし耐性菌も少なくないので、感受性検査は必ずチェックする。


3. 緑膿菌に効く薬を覚える


緑膿菌に効くβラクタム系薬剤

◯緑膿菌に効くペニシリン系薬:ピペラシリン

◯緑膿菌に効くセフェム系薬:セフタジジム、セフェピム

◯カルバペネム系薬:メロペネム


緑膿菌に効くβラクタム系以外の薬剤

◯フルオロキノロン薬:シプロフロキサシン

◯アミノグリコシド薬:ゲンタマイシン、アミカシン、トブラシン



4.緑膿菌に効く薬を使うときにはよく考える

〜抗菌薬適正使用の観点から〜


「緑膿菌に効く薬は、緑膿菌のいない感染症に使うときには、よく考える」

それだけで抗菌薬適正使用に大いに貢献できる。


ということは、大腸菌とクレブシエラに対しては狭域セフェム、それ以外の腸内細菌には広域セフェム(抗緑膿菌作用なし)をまずは考えることになる。