1. 黄色ブドウ球菌とコアグラーゼ陰性ブドウ球菌
■黄色ブドウ球菌は病原性が強い。関連する感染症の例。
○ブドウ球菌は傷ついた皮膚から侵入する
○よって皮膚感染症(例:SSI)の主要起炎菌。
○カテーテル関連感染も同様に理解できる。(同じく主要起炎菌)
○時々肺炎(インフルエンザ感染後、誤嚥性肺炎)を起こす。
○感染すると播種して膿瘍を作りやすい。(心内膜炎、肺膿瘍、骨髄炎等)
■コアグラーゼ陰性ブドウ球菌とは?
○コアグラーゼは黄色ブドウ球菌の主要な病原因子のひとつ。
○黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌はコアグラーゼをもたない。
◯黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌をひとまとめにしてコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)と呼ぶ。
◯CNSは病原性が弱く、医療関連感染や異物に関連した感染などを起こす。
■コアグラーゼ陰性ブドウ球菌が関連する感染症の例
○傷ついた皮膚から侵入して人工物に付着して感染症をきたすことが多い。
○よって、カテーテル関連感染、人工関節・人工弁感染などを起こす。
○黄色ブドウ球菌と異なり、健常部位に播種して膿瘍を作ることは少ない。
2. メチシリン感受性ブドウ球菌とメチシリン耐性ブドウ球菌
■βラクタム系薬の作用点に変異がなく、βラクタム系薬で治療可能な株をメチシリン感受性ブドウ球菌と言う。
■βラクタム系薬の作用点(PBP)変異により耐性を獲得した株をメチシリン耐性ブドウ球菌と言う。
◯中でも、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌はMRSAと呼ばれている。
○メチシリン耐性ブドウ球菌は全てのβラクタム系薬に耐性である。
3.メチシリン感受性ブドウ球菌とペニシリン分解酵素
■ここで、βラクタマーゼという言葉が出てくる。
◯βラクタマーゼにはいろいろある。
◯ブドウ球菌が作るのはペニシリナーゼ(ペニシリン分解酵素)である。
◯ブドウ球菌の80%がペニシリナーゼを産生する。
■ブドウ球菌がペニシリナーゼを産生すると・・・
◯ペニシリンGやアンピシリンは分解されてしまう。
◯だから、2割の菌にしか効かない。
◯よって、他のグラム陽性球菌(連鎖球菌・腸球菌)とは治療薬が変わる
◯ちなみに、連鎖球菌と腸球菌(=ブドウ球菌以外のグラム陽性菌)はアンピシリンで治療ができた。
4.βラクタム薬によるメチシリン感受性ブドウ球菌の治療
■そこで、このような方法を考える。
◯ペニシリナーゼに分解されない薬を使う。 →セフェム系薬
◯ペニシリナーゼを阻害する薬剤を併用する。
→ βラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン(SBT/ABPC)
■メチシリン感受性黄色ブドウ球菌の第一選択薬はセファゾリン
◯セフェム系薬やカルバペネム系薬はほとんどが黄色ブドウ球菌に有効。
◯βラクタマーゼ阻害薬を配合するとペニシリン系薬でも有効。
◯その中で、最も狭域で安全性も高いセファゾリン(第1世代セフェム系薬)を第一選択とする。
5.メチシリン耐性ブドウ球菌の抗菌薬治療
■メチシリン耐性ブドウ球菌がβラクタム薬に耐性である理由
◯βラクタム系薬の作用点であるペニシリン結合蛋白(PBP、細胞壁の原料)の変異。
■メチシリン耐性ブドウ球菌の抗菌薬治療
○バンコマイシンで治療する。
◯βラクタム系薬はすべて無効である。