要約(グラム陽性球菌の治療)
グラム陽性球菌は、①連鎖球菌、②ブドウ球菌、③腸球菌、の3つに大別される。
連鎖球菌の第一選択薬はペニシリンGであり、アンピシリンで代用も可能である。ペニシリン耐性肺炎球菌による髄膜炎のみが例外である。セフェム系薬も有効であるが、肺炎球菌に限ってはセフトリアキソン・セフォタキシム以外のセフェム系薬に耐性を示すことが少なくない。
ブドウ球菌はペニシリン分解酵素を作る株が大半である。したがって第一世代セフェム系薬が第一選択薬となる。メチシリン耐性ブドウ球菌に対してはバンコマイシンが第一選択である。
腸球菌は連鎖球菌と同じくペニシリンGやアンピシリンで治療可能であるが、アンピシリンを用いたほうがよい。腸球菌にはセフェム系は無効である。βラクタム薬は殺菌的に作用する薬剤であるが、腸球菌に対しては例外であり、心内膜炎など殺菌的作用が求められる場合にはゲンタマイシンを併用する。アンピシリン耐性株に対してはバンコマイシンが第一選択である。
新世代のセフェム系薬やカルバペネム系薬は主にグラム陰性菌に対するスペクトラムが広がっているものであり、グラム陽性菌の標的治療に対する有用性は乏しい。グラム陽性菌治療の標的治療にあたっては、まずは、ペニシリンG、アンピシリン、セファゾリン、バンコマイシンの4剤が基本的な選択肢となる。